筋肉の持続収縮によって生じる突っ張り感が痛みとして表現されますから、その原因となっている筋肉にボトックスを注射して筋肉の緊張を緩めることによって効果が現れます。首の周囲には多くの筋肉がありますが、もっとも症状が現れやすいのは図に示した頭板状筋と僧帽筋です。完全に右と左が同じことは少なく、持続収縮には左右差がたいてい見られます。はじめてボトックスを注射するときには、もっとも影響している1筋か2筋に投与するのが良いと思われます。注射によって症状が改善すると、他の筋肉の症状が目立ってくる(もぐら叩き現象)こともあります。これは脳ではもっとも痛い筋肉からの情報を拾いますから、後になって他の筋肉にもかなりの収縮があったことがはじめて自覚されるのです。この様子を見て、2回目の注射のときに分布にあった投与ができますから、1回目はもの足らないことが多いのです。しかし限られた1、2筋に集中して投与すると、効くかどうか、投与量が十分か不十分か、という点が判定できますから、2回目以後のよい指標となります。首回りには多くの筋肉がありますから、2回目からは注射量の増量が必要になることが少なくありません。逆に、はじめからまったく効かなかった場合には、投与量が不足であった可能性も否定できませんが、上記したように精神的要因が強い場合(本人の自覚はない場合も多い)が多く、2回目の実施をしても無駄となりがちですので、むしろ心療内科あるいは神経科などの治療を受けたほうがよいでしょう。